- 酸化発酵による違い -
不発酵
半発酵
発酵
普段、私たちが「〜茶、〜ティー」と呼んでいるものはたくさんあります。緑茶、烏龍茶、麦茶、ハーブティー・・・など。その中でも、緑茶、烏龍茶、紅茶は、実は、同じ茶樹から作られます。学名は「カメリア・シネンシス」(Camellia Sinensis (L) O. Kuntze) 、椿や山茶花と同じ科であり、ツバキ科ツバキ属の常緑樹です。本来「茶」とは、この「カメリア・シネンシス」から作られたものを指します。
では、紅茶と緑茶の違いとは何でしょう? それは、製造法の違いです。お茶の葉の中には酸化酵素というものが含まれていて、この働きを利用して製造するのが紅茶、利用せずに製造するのが緑茶なのです。りんごの皮をむいておいておくと褐色に変化してしまいますが、酸化酵素の働きとはまさにこのこと。この作用を「酸化発酵」と呼びます。
酸化発酵を利用する紅茶の場合、製造の過程で茶葉の色が緑色からつやのある褐色へと変化するだけでなく、水色(すいしょく:抽出液の色)も緑黄色から美しい赤褐色へと、香りは新鮮でグリーンな香りから花や果物を思わせる華やかで芳醇な香りへと、味わいはより深いものへと変化していきます。
一方、酸化発酵を少しだけ利用して作られるのが烏龍茶。実は紅茶の発祥の地は、この烏龍茶の製造が現在も盛んに行われている中国の福建省なのです。17世紀前半に中国からヨーロッパに紹介されたお茶は当初、緑茶でした。お茶の人気が次第に高まり、特にイギリスでは、より水色と味のしっかりした酸化発酵の強いタイプの烏龍茶(福建省産の武夷茶)が好まれるようになりました。イギリス人の嗜好に合わせて産地でさらに酸化発酵を進めていくうちに、完全発酵の黒褐色の紅茶(Black Tea)が生まれたのです。
不発酵
半発酵
発酵
中国からヨーロッパへの長い航海中に船倉で緑茶が変化し紅茶が誕生したという浪漫のある説がありますが、これは残念ながら間違い。製造の際の加熱で茶葉中の酸化酵素は機能を失ってしまい、輸送中に緑茶が紅茶に変化したとは考えられないのです。
いずれにしても紅茶は緑茶と同じ茶樹から作られる兄弟。製造のときにちょっと一手間加えて作られるだけで、色や味にこんなに違いが出てくるんですね。